STORY 07
「農業はもう限界か?」
日本の農業に希望の種を蒔く
群馬県前橋市。かつて田畑に賑わいをもたらしていたこの地は、現在、休耕地が目立つ風景に変わりつつある。減反政策がもたらした米の需要減少、そして少子高齢化による農業の担い手不足が、この地域だけでなく日本全国で深刻な問題となっている。
日本では1970年代から続く減反政策によって、米の生産量が制限され、米作りを主とする農家は次第にその基盤を失っていった。さらに、グローバル化の影響で安価な輸入農産物が市場を占め、国産農産物の価格競争力が低下した。農業は収益の厳しい産業となり、若い世代の農業離れが加速している。結果として、日本の農地の荒廃と農業そのものの存続が危機にさらされている。
農業は自然相手の仕事であり、天候不順や災害による影響を受けやすい。収益が安定しないため、農業を続けるモチベーションを保つのが難しい。「どんなに頑張っても、米の値段が安いままでは生活が成り立たない」「田んぼや畑が荒れていくのを見ると、昔はここに稲が揺れていたのに…」農業が盛んだった時代と比べ、地域の活気が失われていくことを悲しむ声もある。
食を支える農業は、国の礎を支える大切な柱だ。
安心・安全な食材を生産したい。
安心・安全は「米」を食べてほしい。
一人ではできないなら、組織の力でやればいい。
つくり方がわからないなら、学べばいい。
私たちは農業事業「大和の台所」を立ち上げた。
地域の休耕地を利用し、無肥料・無農薬にこだわった米づくりを開始した。農薬や化学肥料を使わず、自然の力を信じた栽培方法は、環境への負荷を最小限に抑え、持続可能な農業を実現する手段である。土地本来の力を活かし、安心・安全な食材を生み出すことを目指している。
更には米の第6次産業化。
無農薬米を原料にした米粉、日本酒、菓子といった加工品を開発し、農作物に新たな価値を付加することで、農業の収益性を高めることを目指している。
しかし、無肥料・無農薬の米づくりは多くの困難を伴う。収穫量は通常よりも少なく、雑草の管理はすべて手作業で行わなければならない。手間と時間がかかるだけでなく、市場での取引価格も低いため、経済的な課題も大きい。それでも、地域農業を守り、日本の農業の未来を築くために、この道を選んだ。
2024年秋。
初めての収穫量は3.6t。
「農業はもう限界か?」
私たちは諦めない。
新しい可能性を探り続けることで、日本の農業に希望の種をまく。困難な道ではあるが、この土地で生まれる米が、地域や人々の未来を耕す力になると信じている。
大和の台所
日本の耕地面積は最大だった昭和36年の609万ヘクタールから毎年2.9万ヘクタール(東京ドーム6,170個分)が毎年無くなっています。また、就農人口の高齢化も顕著です。手間も時間もかかるため、有機や無農薬で農作物をつくることができる農家も多くはありません。
私たちは農業の価値を高めたい。農業を6次産業化しビジネスモデルを構築することで就農者を増やし、国内の食料自給率を高めるだけでなく、日本の製品を広く海外で販売することを目指しています。
